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自社ブランドの開発とマクアケへの出品

タイトル:制作現場の裏側 初めての自社ブランドをマクアケに出品、成功の秘訣

クラファンMakuakeに自社製品を掲載、販路開拓を目指す

「デザインの力で世の中に新しい価値を」
そう思っていても、いざ自社ブランドを立ち上げ、世の中に広めるのは簡単なことではありません。特に、私たちが手がけるフライフィッシングというニッチな分野では、その道のりはより険しいものでした。

無名のブランドで、販路もない。専門店に営業しても、あっさり断られる。そんな状況から、クラウドファンディングサイトMakuake(マクアケ)で自社製品「Graffiti 3」を世に送り出し、販路開拓に成功した軌跡をご紹介します。


Graffiti reels

プロジェクトの背景:なぜ「Graffiti 3」を作ったのか

このプロジェクトの根底には、開発者自身の長年にわたる「ある思い」と、現代のフライリール市場への疑問がありました。

1981年からの宿願


開発者は1981年以降、前職でいくつかのフライリールの開発に携わりました。
しかし、当時のリールは「会社の諸々の事情」により、デザイン担当者として心から満足できる出来栄えではありませんでした。

「いつか、自分が本当に納得できるフライリールを世に送り出したい!」

この思いは、以降ずっと開発者の胸に持ち続けられることになりました。


現代リールへの課題意識


その後、開発者は独立し、引き続き釣具の製品開発に携わりながら、自身も熱心なフライフィッシング愛好家として釣りを続けてきました。その中で、かねてからある課題を感じていました。

それは、現代のフライリールが機能性を最優先に開発され、クラシックな魅力を持つ製品がほとんど作られていないという点です。最新の技術を駆使した高スペックリールが主流となる一方で、昔ながらの「道具としての味わい」を求めるフライマンが、クラシックスタイルのリールを手に入れることは極めて難しくなっていました。(多くのメーカーでクラシックスタイルはもはや製造されなくなった)

クラシックリールを愛する釣り人が、その味わい深いリールを手に入れるには、中古市場に頼るしかありません。しかし、良質な状態の品を見つけ出すのは至難の業であり、多くのフライマンがその「道具との出会い」を夢見ながらも叶えられない状況が続いていました。

デザイナーの長年の夢とクラシックリールへの情熱

「Graffiti 3」は、この長年の課題意識と、1981年から持ち続けたデザイナーとしての情熱が結実したプロジェクトです。機能性だけでなく、持つ喜び、使う楽しさ、そしてクラシックな美しさを現代に蘇らせ、本物の道具としての魅力を求めるすべてのフライマンに届けたい。そんな熱い思いを込めて、「Graffiti 3」は誕生しました。

従来の販路が通用しなかった。。。

フライフィッシングの世界に新たな風を吹かせようと意気込んでいましたが、現実は甘くありませんでした。

  • 製造費用の調達が難しかった
  • 無名のブランドで、実績が全くなかった
  • 販路がないため、どうやって製品を届けるか見当もつかなかった
  • 専門店に営業に行っても、反応が薄く、あっさり断られた
  • プロモーション予算がなかった

このままでは、どんなに良い製品でも世に埋もれてしまう。そんな状況を打破するために、私たちはMakuakeへの出品を決めました。

Makuakeで成功するための準備


MakuakeでのGraffiti 3のプロジェクトページ

▶︎Makuake Graffiti 3のプロジェクトページはこちら

ターゲット設定:誰に、どんな価値を届けたかったのか

Graffiti 3のターゲットは、40〜60代の男性です。
彼らはフライフィッシングのキャリアが長く、自分なりのスタイルを確立しています。さらに、釣り以外にもバイクやJAZZ、写真、ウイスキーなどを嗜む、いわゆる「アウトドア系ダンディズム」を嗜好する人々です。

このターゲットに機能性だけではなく、道具としての味わいやストーリーに共感してくれるようなページを作ることが重要だと考えました。

コンセプト設計:「ネオクラシックリール」という言葉

私たちがこだわったのは、Graffiti 3の「アタラシイ価値」を言葉にすることでした。
単なる復刻や模倣ではなく、「フライリールの伝統を継承し、現代の加工技術で精度と軽量化を両立する」というコンセプトを、「ネオクラシックリール」というキャッチコピーで表現しました。
この言葉が、私たちが目指す世界観を明確にし、共感を呼ぶ核となりました。


ストーリーテリング:情熱をどう伝えるか


製品に込めた想いを伝えるため、開発者のバックグラウンドを物語として語ることにしました。
前職での若き日々の開発秘話から、フライフィッシングへの深い愛情、そして「Graffiti 3」に込めた哲学まで。モノづくりへの情熱とフライフィッシングへの愛が融合したストーリーを紡ぐことで、読み手の心に深く響くページを目指しました。

プロジェクトページ作成でこだわった3つのポイント

プロジェクトの成功を左右するMakuakeのプロジェクトページ。私たちは特に以下の3つのポイントにこだわりました。


1. ビジュアル:シンプルかつ世界観を伝える写真と動画


製品の美しさを際立たせるため、白背景でシンプルな製品画像を多用しました。一方で、フライフィッシングの世界観を表現するために、バンブーロッドに装着した写真や、釣り場での使用風景も掲載しました。
さらに、モノづくりの情熱を伝えるため、設計図面やスケッチも載せることで、製品の信頼感を高めました。


白背景でシンプルな製品画像

白背景でシンプルな製品画像


Graffiti 3スケッチ

Graffiti 3スケッチ


釣り場での使用風景

釣り場での使用風景


2. ライティング:共感を呼ぶ言葉の選び方


ターゲットに響く言葉を選ぶために、私たちはいくつかの工夫をしました。

  • 「わかる人にはわかる」言葉を使う: ターゲットであるベテランフライマンに共感できるよう、「道具としての味わい」「ネオクラシック」といった専門的でありながらも、心に響く言葉を意図的に使いました。
  • 「なぜこの製品が必要なのか」を明確にする: 「現代のフライリールにはない魅力」や「中古市場に頼らざるを得ない現状」を具体的に説明し、Graffiti 3がその課題を解決する存在であることを明確に伝えました。
  • ストーリーを織り交ぜる: 開発者の想いを随所に散りばめることで、単なる製品説明に留まらず、読み手の心を動かす文章を心がけました。

いざプロジェクトページを作ってみると、まるで出品者の思い満載のブログのようなストーリーになっていきました。しかし今思えば、その熱い気持ちこそが、多くの人の心を動かすカギだったのだと思います。

3. リターン設定:ターゲットの心理を考慮した価格設定

まずは、競合製品と比較してGraffiti 3の定価を決定しました。その上で、Makuakeではお得な割引価格を設定。クラウドファンディングならではの「応援したい」という気持ちと、「お得に手に入れたい」という消費者の心理の両方を満たすようにしました。


広報・集客で効果があったこと


プロジェクト公開前、開発者のInstagramのフォロワーは950人程度。購入してもらえるとしたら、フォロワーからの応援購入が多いと見込んでいました。
しかし、蓋を開けてみると、フォロワーではなく全く知らない方からの購入が半分くらいあったのです。これは、Makuakeのプラットフォーム自体の集客力と、プロジェクトページの魅力が大きかったことを示しています。
もちろん、プロジェクト掲載後はフォロワーも増加。InstagramやFacebook、ブログでの日々の投稿が、Graffiti 3への関心を高める一助になったことも間違いありません。

Makuake挑戦で気づいたこと

「モノづくり」と「世に届けること」は同時に考える

今回のプロジェクトページ制作では「モノづくり」と「世に届けること」は、同時に考える必要があると強く感じました。製品の核となるコンセプトがしっかりしていれば、その魅力を最大限に引き出し、効果的に世に届けるためのMakuakeのプロジェクトページは、迷いなく作ることができます。どんなに良い製品も、それが世に出なければ何の意味もないのです。

Makuakeの「アタラシイ」の定義とは

Makuakeの「アタラシイ」は、必ずしも世界初の技術である必要はなく、プロジェクトが持つ「特別な価値」をいかに言語化し、サポーターの共感を呼ぶか、という点が鍵となるかと思います。

【Graffiti 3の「アタラシイ」とは】
「Graffiti 3」のプロジェクトでは、機能や仕様に新しい要素はありませんでした。

  1. 機能・技術:特別新しいものはなく、むしろ既存の優れた(使いやすい)機能をそのまま活かした。
  2. 「アタラシイ」の要素:ターゲット層に合わせたデザインのみを一新した

「ターゲットとなる人の好みや価値観に合わせたデザインや見せ方」(アプローチ)を工夫することで、サポーターに「これは私のためのものだ!」「今までになかった体験だ!」と感じてもらい、新しいものとして受け入れてもらえる、ということです。
つまり、「中身(機能)はそのまま」でも、「見せ方(デザイン)を変える」だけで、新しい価値は生まれるのです。

いくつかの書類提出は面倒くさがらずに

プロジェクト掲載には、製造委託契約書や発注書など、いくつかの書類提出が求められるのですが、これらは単なる書類ではなく、プロジェクトの信頼性を証明するための重要な証拠でした。
これはモノづくりに没頭しがちな私たちにとって、プロジェクトを客観的に見つめ直す良い機会となりました。
また、担当者(キュレーター)とのやりとりや、事前に読む資料は、私たちのようなモノ作り経験者にとってもあらためて勉強になる内容ばかりでした。

そして新たな物語の始まり

Graffiti 3のプロジェクトは、Makuakeで大成功を収め、多くの方に私たちの想いを届けることができました。しかし、私たちの旅はそこで終わりではありません。この成功を足がかりに、リアルな世界での販路開拓に乗り出しました。

実はMakuake掲載前、インスタグラムでGraffiti 3の投稿を始めていたところ、とある方から「ぜひ仕入れたい」というメールが届きました。インスタグラムの投稿を見て、すぐに連絡をくれたのです。ありがたいことに早くからこのリールの存在価値を評価していただいている方がおられたのです。

また、Makuake終了から約2週間後、私たちはフライフィッシングの業界誌に広告を掲載しました。すると、雑誌が発売されてすぐ、今度はフライフィッシング愛好家なら誰もが知る有名なプロショップからメールが届きました。

そのメールを受け、後日お電話で話をする機会をいただきました。その電話口で店長が興奮気味に話してくれました。
「マクアケのページを拝見し、Graffiti 3の開発者が、私がフライを始めた時に使っていたリールの開発者だと気づいたんです」と。

私たちが情熱を込めて作ったストーリーは、世代を越えて、遠い場所で昔の仲間と再会させてくれたのです。

その後、どちらの方ともご縁をいただき、実店舗での卸販売契約を結ぶことができました。本当に嬉しく感謝に耐えません。ありがとうございます。

そして契約から数日後、そのプロショップから追加注文のご連絡をいただいたのです。驚いたことに、まだ実物をお客さまに見せていないにも関わらず、雑誌の写真だけで「これは欲しい!」と予約を入れてくれるお客さまが多数いらっしゃるとのことでした。

その瞬間、私たちはMakuakeで積み重ねてきた「想いを伝えること」の大切さが、単なるオンライン上だけの成功ではないと確信しました。


プロショップ店長と開発者

最後に

販路も予算もない無名のブランドが、Makuakeでの成功を経て、そして憧れのプロショップで扱っていただけるようになるまでの物語。Graffiti 3の挑戦は、「良いモノは、ちゃんと想いを伝えることで、道が開ける」ということを私たちに教えてくれました。

もし今、あなたが新しい挑戦に踏み出すことをためらっているのなら、ぜひMakuakeの扉を叩いてみてください。きっと、あなたの情熱は報われるはずです。

<編集後記>

おかげさまで、本記事でご紹介した「Graffiti 3 BG」は大変多くの反響をいただき、現在、手元の在庫は残り数個となりました。(2025.12.25 現在)私たちの想いに共感してくださった皆様に、心より感謝申し上げます。
▶︎製品の詳細・お問い合わせはこちら


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